自然乾燥材はどちら?

人工乾燥材と自然乾燥材
自然乾燥材はどちら?

■自然乾燥材はどちら?

木材の乾燥の仕方はいろいろあるけど、大きく分けると大きな窯などで機械的に乾かす人工乾燥と、桟積みして天日と風で乾かす自然(天然)乾燥に分かれます。上の写真を見てどちらが自然乾燥が分かりますか?ここでは、それぞれの特徴と見分け方を紹介していきたいと思います。

 

 

自然乾燥させた桧の丸太
自然乾燥させた桧の丸太

■なぜ木を乾燥させるのか

立ち木(山の生えている木)の状態では杉や桧の含水率は150%以上あります。つまり、木だけの重さより1.5倍以上の水分を含んでいることになります。木を伐採するとこの水分が徐々に抜けて、この乾燥につれて縮んでいきます。野菜なども乾燥させると縮みますが、これと同様の現象が木材にも起きるわけです。

 

木材に含まれる水分は、外側の新しい組織ほど多く含まれていて、芯に近い部分ほど油分が多くなります。

 

ちなみに外側の白い部分を白太(シラタ)、内側の赤い部分を赤身(アカミ)と呼び、白い部分が25年ほど経つと赤くなります。外側の方が水分が多くてよく縮むから、木は乾燥すると外側が割れてしまいます。写真は桧の丸太の端材を自然乾燥させたものです。

 

 

内部割れしている人工乾燥材
内部割れしている人工乾燥材

■人工乾燥材とは

右の写真は、高温式の蒸気乾燥法で乾燥された杉の柱材です。乾燥炉内を100℃以上の高温多湿に保ち、サウナのような環境で、表面を加湿しながら乾燥させるので、表面割れが起こりにくく、芯に近い部分をしっかり乾かすことができます。中心に向けてすぼむように縮んだ割れを内部割れと呼び、これは、高温のため水分と一緒に油分も抜けることが原因です。

 

乾燥時間も1週間ほどと早く、乾燥が難しいとされる杉の赤身もしっかりと乾いて、表面割れも防げるので、この乾燥法が、国内において、最も一般的で、この乾燥木材が大量に流通しています。

 

しかし、高温にさらされることで、細胞破壊が起きて、材自体の強度低下が起きています。そして、油分が抜けることで、木、本来の色、艶がなくなること、また、耐久性や耐蟻性など油分に含まれている有効な成分が抜けてしまいます。つまり、見た目は割れがなくてきれいだけど、中身がすかすかの状態です。ヒノキの場合は内部割れもしてないことが多いので、見極めにくいですが、芯を含んだ材で4面割れてない材は、未乾燥材か蒸気式乾燥材です。どこにも割れがないのが、一番、不自然なんです。

 

 

背割りの入った自然乾燥材
背割りの入った自然乾燥材

■自然乾燥材とは

柱を表しで使うときに最も適しているのが、自然乾燥材です。時間をかけて乾燥させているので、水分だけが抜けて油分が残っているので、中からにじみ出てくるような艶があり、色もきれいです。そして、木、本来の香りを楽しむことができます。

 

四角に製材してそのままだと、上の丸太の写真のように無造作に割れが入るので、割れる前に右の写真のように切込みを入れます。この切込みを背割りと呼び、V字になっているのは、最初はまっすぐだったのが、木が乾燥して開いたということです。

 

自然乾燥材の場合、内部の水分は抜けづらく、1年以上乾燥させたとしても、含水率は15%までで、現代の住宅の場合、空調や暖房で、含水率10%以下になることもあるので、建築後も乾燥が進みます。なので、そのあたりを予測して、材料に合わせて加工することが必要で、職人による手刻みが、自然乾燥材に適している理由です。

 

 

■似て非なるもの

同じ乾燥材でも、乾燥の仕方でずいぶんと違いが出ることが写真でも分かると思いますが、日々、木に触れて仕事をしていると、その違いは歴然としていて、自然乾燥材の良さを言葉で表現しようとしてもなかなか伝えられないことが多いです。一般の方は木に触れる機会が少ないので、木の素材を見極めることは難しいことになっているみたいで、先日、テレビ番組で本物の木プリントの木を選ぶ実験をしていて、かなりの人が間違えていたので驚きました。

 

そんな状況なので、木の乾燥方法まで見極めてくださいというのは、かなりマニアックなことなんですが、でもとても大事なことなんです。一つには、色、艶、香りなど自然乾燥材の良さは格別で、最初はわからなくても、自然乾燥材の家に住んでいるとその違いや良さはわかってくると思うんです。そして、もう一つは、杉や桧の自然乾燥材の赤身の部分に多く含まれる油分には、シロアリに食べられにくい成分が含まれていて、防蟻剤を塗ったり、注入したりするより、よほど効果が高いです。

 

古民家再生などの工事をしているとほとんどの家でシロアリの被害はあるんですけど、戦前の建物は当然自然乾燥材で建てられているから、芯の部分は食べられずに残っていて、結構その部分で長年耐えてたんだなっていう家は多いです。逆に戦後、高度成長期に建てられた住宅では、柱丸ごとなくなっているなんてこともあります。これは、乾燥だけの問題じゃなく、外材だったり、集成材だったりもするんですけど、少なくとも、戦前の家で、シロアリの被害にあってないのは、自然乾燥材の赤身です。防蟻剤は表面だけだし、揮発するからもって10年です。壁の中の柱は後から塗ることも出来ません。赤身に含まれている油分は半永久的に効果を発揮します。なので、家に使う木は、自然乾燥させたものをオススメします。

 

自然乾燥させた赤身の柱
自然乾燥させた赤身の柱

木を見るときに、表面の割れや含水率だけで判断するんじゃなくて、含油率みたいな見方をしてみるといいと思うんです。「この木は油がのってて良いな。」みたいな。

 

最初の写真は一般に流通している杉の人工乾燥材「小木土家」の柱材の端材を並べたものでした。大工は木を見るとき木口を見ます。表面よりも小口の方が木の育ち方や乾燥状態を判断できるからです。

 

時間的な制約もあると思いますが、製材所にストックしてある材料もあるし、自然乾燥と人工乾燥を組み合わせてもいいです。製材所によって乾燥方法もいろいろです。ぜひ、乾燥にこだわって、木、本来の風合いや香りを楽しんでください。自然と長持ちする家となっているはずです。

 

 

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